肥料価格が高騰するなか、神戸市は、下水の処理の過程で出るリンを取り出し、肥料として再利用する取り組みを進めていて、12月中旬から一般家庭向けにも販売することにしています。
国内で使われる化学肥料は、ほとんどを輸入に頼っていて、農林水産省によりますと、肥料に欠かせない栄養素の「リン」の価格は、最大の輸出国である中国が輸出を制限していることからこのところ高騰しています。
こうした中、神戸市は、民間企業と協力して、排せつ物などの下水処理の過程で出る廃棄物からリンを取り出し、肥料として再利用する取り組みを進めています。
神戸市は、こうして作られた肥料を「こうべハーベスト」と名付けて市内の農家に安く販売し、価格高騰の影響を受ける農家を支援しています。
最近では、ほかの自治体からの視察が相次いでいるということで、神戸市では、この取り組みを全国に広め、肥料の海外依存度の低下につなげたいとしています。
神戸市下水道部の寺岡宏・計画課長は、「肥料が高騰し、今年度に入って問い合わせも非常に多くなっています。神戸市の取り組みが全国に展開してもらえることを願っています」と話していました。
神戸市は、この肥料を12月中旬から一般家庭向けにも販売する予定です。
【肥料を使っている農家は】
神戸市西区でキャベツを生産する農家では、市が下水処理場から回収したリンを使った肥料を利用しています。
この農家では、年間6トンもの肥料を使うことから肥料価格は経営に大きな影響がありますが、5年ほど前から下水を再生した肥料に切り替えていたため、肥料価格が高騰する中、影響を受けずに済みました。
下水から出るリンを使った肥料でも、収穫量や味は、通常の肥料を使った場合と同じだということです。
農家の山本正樹さんは、「価格が抑えられるのが一番有効です。地産地消の逆バージョンで、都会から出た産物をここで作ってまた循環するという考えはとてもいいと思います」と話していました。
【専門家も評価】
下水の処理の過程で出るリンを取り出し、肥料として再利用する神戸市の取り組みについて、農業経済学が専門で国の農業政策の委員なども務めた東京大学大学院の鈴木宣弘教授は「神戸市の取り組みは非常にすばらしい。その取り組みをさらに拡大し、全国に広げることが非常に重要だ」と話しています。
また、現在の肥料価格の高騰だけでなく、将来的には原料の輸入が難しくなる事態も想定されるとしたうえで、「お金を出せば食料や生産資材が買えるという時代は終わった。下水を再利用した食料生産の過程をしっかりと築き上げることによって、いかなるときにも国民の命を守ることが出来る。そういった食料供給体制を作ることが、安全保障にとって必要な喫緊の課題だ」と指摘しています。
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