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Wednesday, March 29, 2023

【連載小説】きらん風月(80)文化の中心地を出るのか - 産経ニュース

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大前純史・画

第六章 孵らぬ卵 十一 (文・永井紗耶子)

蒹葭堂(けんかどう)をじっと見つめて固唾(かたず)を吞(の)む。すると蒹葭堂は眉(まゆ)を寄せた。

「知るかいな、そんなこと」

縋(すが)るような鬼卵(きらん)の眼差(まなざ)しを断つように、ひらひらと手のひらで振り払う。

「あのな、芽が出ますか、て聞かれて、出るて答えてみ。いつ出ますか、どう出ますかて聞くやろ。出んて答えてみ。何が悪いんですか、どうすれば出ますかて聞くやろ。どの道、儂(わし)は面倒に巻き込まれるだけや。そんなことはな、手前が一番知ってんねん」

鬼卵はぐっと唇を真一文字に引き結ぶ。その顔を見て蒹葭堂はおかしそうに笑う。

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