三重県伊賀市出身の元幕内千代の国(33)=本名・沢田憲輝、九重部屋=が大相撲名古屋場所で現役を引退し、年寄「佐ノ山」を襲名した。大けがを何度も乗り越え、気っ風の良い突っ張りでファンをわかせた17年間の土俵人生だった。
22日の引退記者会見。声を詰まらせながら、引退の理由を話した。「けがの状態が悪くなり、気持ちと体の限界がきました。三役に上がれなかったのは心残りですが、それ以外はやりきった。後悔はない」
父・覚法さんが元横綱千代の富士(先代九重親方)のファン。名張市立北中で柔道や空手に取り組んだ後、15歳で九重部屋に入門した。
兄弟子の千代大海(現・九重親方)から突っ張りを習い、頭角を現す。20歳で伊賀地区では初の関取昇進を決め、21歳で新入幕。東前頭筆頭まで番付を上げたが、その上には行けなかった。大けがに泣かされた。
肩の脱臼癖のほか、ひじ、ひざ、太もも……。幕内から2度、幕下以下に落ちたが、治療とリハビリに耐え、2度とも幕内まで戻った。部屋の後輩は千代の国を「不死鳥」と呼んだ。
一本気。取組前に全身に気合を入れるのがルーティンだったが、気合が入りすぎて気絶してしまったこともある。稽古も手を抜かず、腕立て伏せを1日に1千回以上、四股を500回していた時期も。けがに苦しんだ千代の富士が「筋肉のよろい」をまとって克服したのを見習ったのだ。
現師匠の九重親方は「先代の教えだった『不撓不屈(ふとうふくつ)』の精神を持ち、けがに負けない、けがにだらけない。必ず次のステージに向かって努力する。私だけでなく、全員が千代の国から学んだ」と振り返る。
今年、ひざの状態が悪化した。5月の夏場所を途中休場。もう土俵に上がれないと覚悟していたが、引退の地に、地元に近い名古屋を選んだ。「地元の方々は、涙が出るくらい温かい言葉をかけていただいて、本当にうれしかったです。ずっと支えでいてくれました。感謝の気持ちでいっぱいです」と、記者会見でむせび泣きながら感謝を口にした。
今後は佐ノ山親方として、後進の指導にあたる。
「逃げない気持ちと強い心を持ったお相撲さんを、師匠のもと、育てて行ければなと思います」
幕内34場所での通算成績は199勝216敗95休。敢闘賞を2度受賞し、2017年夏場所で横綱鶴竜から唯一の金星を獲得した。(鈴木健輔)
からの記事と詳細 ( 「不死鳥」千代の国が現役引退 「涙出るくらい温かかった」:朝日 ... - 朝日新聞デジタル )
https://ift.tt/yzPvEWF
出る
No comments:
Post a Comment