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ドイツVolkswagen（フォルクスワーゲン、VW）の日本法人であるフォルクスワーゲングループジャパン（VGJ）は2024年7月、向こう6カ月程度の間に国内で発売する新型車を一挙に5車種発表した。一度にこれだけ多くの新型車を発表するのは、輸入車としては異例だ。
一挙に5車種の新型車を発表したフォルクスワーゲングループジャパン（VGJ）の発表会
（写真：VGJ）
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今回発表したのは、発売時期が近いモデルから、2024年7月から予約注文を受け付ける「T-Cross（ティークロス）」の部分改良モデル、2024年内の発売を予定する新型「Passat（パサート）」と新型「Tiguan（ティグアン）」、それに2025年1月の発売を予定する「Golf（ゴルフ）」と「Golf Variant（ゴルフ ヴァリアント）」の部分改良モデルである。これだけの新型車を短い期間に導入する背景には、このところ低迷しているVWブランドを盛り返そうとする狙いがあると見られる。
2014年まで、VWは輸入車で最も販売台数の多いブランドだった。ところが2015年に販売台数トップのポジションをドイツMercedes-Benz（メルセデス・ベンツ）に譲って以来、そのシェアはずるずると低下しており、2014年まで第3位のブランドだったドイツBMWに抜かれる年もある。ここ6〜7年は、トヨタ自動車や日産自動車が海外生産車種を逆輸入している影響もあり、輸入車全体に占める海外ブランド全体のシェアが低下している。このため、ひところ20％程度あった輸入車に占めるVWブランドのシェアは、2020年以降は10％程度で推移しているのが現状だ。
VWの輸入車に占めるシェアは2014年以降、低下し続けている
（出所：日本自動車輸入組合の資料から筆者が作成）
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ディーゼルゲートが主因
2015年以降にVWの日本市場でのシェアが急落した原因は、2015年に発覚した「ディーゼルゲート事件」だ。ご記憶の読者も多いと思うが、VWが厳しい排ガス規制に対応するために不正な制御ソフトウエアを搭載していたという事件である。VWが不正ソフトの搭載に手を染めた背景には、米国の厳しい排ガス規制があった。
この規制にまともに対応しようとすると、排ガス浄化装置にコストがかかり、しかも燃費や出力が低下してしまうという問題があった。このためVWは、台上試験機で排ガスを計測しているときだけ規制値を満足し、実走行時は排ガス浄化性能を低下させて燃費や出力を向上させる違法ソフトを搭載していたのだ。このことが明るみに出たことで、国内でもVWのブランドイメージは地に落ち、販売台数は急減した。代わってMercedes-BenzやBMWといったブランドがシェアを獲得していったのである。
しかし本来、Mercedes-BenzやBMWのようなプレミアムブランドよりも、VWのような大衆車ブランドの販売台数が低いのはおかしいことである。こうした状況に対して、誰よりも忸怩（じくじ）たる思いでいたのは、ほかならぬVWだろう。長期低落傾向をなんとか反転したい、そういう思いが今回の発表に込められているのは間違いない。
戦略的な価格設定
そうした意気込みの表れの1つが戦略的な価格設定だ。今回発表された新型車の中で唯一価格が発表されたのがコンパクトSUVのT-Crossなのだが、最上級グレードの「TSI R-Line」では装備レベルを維持しながら価格を約10万円下げたほか、中間グレードの「TSI Style」とベースグレードの「TSI Active」ではわずかな値上げにとどめながら、それぞれ約14万円、約15万円相当の装備を追加した。つまりどのグレードも、部分改良前に比べると、最低でも10万円程度、買い得になっているということだ。これは、ユーロに対して円が弱くなっているこのところの情勢を思えば、そしてT-Crossが輸入車の中で、同じコンパクトクラスのSUVでは2022年まで3年連続でトップシェアを誇る（VGJ調べ）人気車種であることを考えれば、VGJはかなり思い切った値付けをしたといえるだろう。
部分改良したT-Crossはどのグレードも実質的に10万円以上買い得感のある価格を設定した
（出所：VGJ）
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