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大阪エヴェッサ
ロスターの半数近くを入れ替え、30代以上の日本人選手は#33アイラ・ブラウンのみと、今季のエヴェッサは一気に若返った。昨季までは中堅の年齢層だった#2伊藤達哉は、新しいシーズンを迎えると日本人選手ではブラウン、#20合田怜に次ぐ年長者となっていた。
「本当にね、ビックリでしたよ(笑)。Bリーグに入ってからこれまでは逆の立場でしたが、今季の日本人選手では年齢が上のほう。なので視野を広く持ってコートの内外で、ルーキーたちを引っ張っていきたいと思ってプレーしています。#3エリエット・ドンリー選手や#13中村浩陸選手をはじめ、ルーキーたちはもっともっとアグレッシヴにやっていいと思う。それでダメだったとしても、僕がいるから安心してプレーしていい。それを背中で示して、引っ張っていきたいと思ってやっています」
今季は多くの選手が入れ替わった上に、コロナの影響でチーム作りが遅れ、開幕から6戦は2勝4敗とつまずいてしまった。
「開幕2戦目に、B2から昇格したばかりの広島ドラゴンフライズに負けてしまったのは想定外でしたし、次の川崎ブレイブサンダースには2戦とも完敗。川崎戦は、自分たちの課題が見つかった試合でもありました。とはいえ、すぐに調子の波に乗ったわけではなかったです。試合を重ねるにつれて、ひとりひとりが自分の役割をわかってきて、段々と上手くいってきたような感じですね。シーズン最初の結果は良くなかったですが、チームとしての手応えはあったし、感触は悪くなかったんですよ」
伊藤の言葉通り、今季序盤は黒星が先行する苦しい戦いが続いた。それでも崩壊することなく踏ん張り続けられたのは、これも彼が言うように、プレーする選手たちが一様に今季のチームに手応えを感じていたからだ。そして開幕から3ヶ月が過ぎた昨年末あたりから、エヴェッサは本来の力を発揮し始める。
「昨年の12月ごろから宇都宮ブレックス、千葉ジェッツふなばし、アルバルク東京の、いわゆる東の強豪にいずれも1勝1敗でしたが、勝つことができた。チームのみんなにも、あそこで自信がついた部分があったと思います。どの試合も初戦に負けて、次の日は粘って勝った。強いチーム相手に負けっぱなしで終わらなかったのは大きかったですし、あそこで勝っていなかったら、チームの雰囲気は下に落ちていったと思います。今振り返ると、あの時期が良い意味でのターニングポイントだったんじゃないかな」
チームが本来のポテンシャルを発揮し始めると、自ずと白星が積み重なってきた。年明け以降は連敗がなく、連勝は最大で5を記録。現在も前節の横浜ビー・コルセアーズ戦に勝利し、4連勝中である。だがエヴェッサ在籍2季目となる男は現状に甘んじてはいない。
「今季はメンバーが大きく入れ替わって、全体的に良くはなっているんですけど、チームのケミストリーが完璧かと言われれば、まだそうではない面が残っています。大差を逆転されてしまったこともありましたし、あんな試合をしていたら、上に行くことはできません。ひとりひとりがだれかのせいにするのではなく、もっともっと自分自身を高める。そうしないとこれから先、強いチームには勝てない。そこが、チームの課題だと思います」
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自身の今季は開幕から15戦連続でスターター出場しながら、その後にコンディション不良に見舞われ約1ヶ月間にわたって欠場。復帰すると役割は、ベンチスタートに変わっていた。
「スターターで出る際は、アグレッシヴにプレーしていたんですけど、ベンチスタートのときは周りを生かすことを心掛けています。自分がガムシャラに行くのではなく、そこは使い分けています。交代で出る場合に意識するのは、チームの流れをいかに変えるか。リードしていたら、もっとギアを上げる。大学時代は控えで出ることも多くて、後から出てなにをすればいいのかは、わかっているつもりです」
ベンチスタートになれば、いっしょに出る選手の組み合わせや、自身に課せられる役割なども変わる。また直近の2試合は再び先発出場と、変化する起用法に自分を合わせるのに少なからず困難はあるだろう。だがエヴェッサが誇るスピードスターにして、チームの司令塔は、頼もしい言葉を返してくれた。
「役割が変わって、多少の戸惑いなどはありました。でもいっしょに出るメンバーが代わったからといって、ポイントガードとしてチームメイトの特徴をつかんでいれば、どうにでもなります。最初は少し違和感があったけど、今は全然問題ありません。ベンチから出る場面では#41ギャレット・スタツ選手ら、生かさないといけない選手がいる。たとえば#55ジョシュ・ハレルソン選手に出すパスと、スタツ選手に出すそれとでは、質が違ってくるんです。そういったことにも、対応しています」
レギュラーシーズンは今節を含め、残り5試合。初のチャンピオンシップ(CS)進出はもちろんのこと、クオーターファイナルのホーム開催権が得られる2位を、なんとしても死守したい。
「そのために大事なのはやっぱり、試合の出だしじゃないですかね。出だしから、いかに相手にダメだと思わせるか。強豪と呼ばれるチームは、ファーストパンチを相手に食らわせて、近づけさせない。そういうことを宇都宮や川崎と戦ったときに、自分たちが実感させられました。レギュラーシーズンはあと少しですが、その先のためにも、僕たちも試合の出だしで、相手を圧倒する術と力を身に付けないといけない」
今のエヴェッサのメンバーのなかで、CS出場経験があるのはブラウンと伊藤のみ。伊藤は京都ハンナリーズでルーキーシーズンだった2017-18シーズンに、CS出場を果たしている。だが初めての大舞台で残ったのは、苦い記憶。
「初戦のクオーターファイナルで、優勝するアルバルク東京に負けて、そこから先に行けていないんですよね。しかもあのときは、1勝もできませんでした。だからこそ、もっと上に行きたい気持ちが強くあるんです。CSに進めばシーズン中の勝敗に関係なく、勢いがあるチームが勝ち残れると思う」
CSを経験して、得る経験値がレギュラーシーズンでのものより、もっと大きなものだったことを実感した。負けたら終わりの緊張感が選手を、そしてチームを成長させる栄養素になる。それを得てさらに強くなるために、あの舞台に立たなくてはならない。
「エヴェッサに来た大きな理由は、CSに出たいから。残りのレギュラーシーズンを含めて、どんな起用をされてもチームの勝利に貢献できるように、自分の仕事を理解したうえで頑張ります。とにかくCSに出ることが、いちばん重要。そしてなんとしても2位に入って、ホームで戦いたい」
強く締めくくった最後の言葉は、決意の表れ。背番号2はエヴェッサのCS進出のため、持てる力のすべてを注ぐ。
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