9月29日投開票の自民党総裁選に向け、過去4度戦っている石破茂元幹事長が態度を明確にしていない。昨年の総裁選で大敗し、自らが率いる石破派はメンバーが減り、国会議員の支持拡大も見通せない。今回は我慢の不出馬との見方が根強いが、石破氏は「白紙」として出馬を排除していない。遠のいた宰相の座をたぐり寄せる戦略をどう描くか、注目される。
「自分がどうすべきかよく考えなければいけない。うそやまやかしのない政治をやる」。石破氏は28日、地元・鳥取県で開かれた会合で、新型コロナウイルス対策の臨時国会が開かれない場合、総裁選への対応を検討することをにじませた。これまで菅義偉首相の下で衆院選を戦うこと「やむなし」としていた石破氏だが、総裁選の日程が決定した直後から柔軟な姿勢を見せている。
ただ、立候補の準備をしているそぶりも見せていない。煮え切らない態度は、乗り越えなければならない二つの壁があるからだ。
派閥幹部の慎重論を押し切り、出馬した昨年9月の総裁選では最下位に沈んだ。責任を取り、石破氏は会長を辞任。派閥を離れる議員が相次ぎ、自派だけでは立候補に必要な「推薦人20人」に届かない17人。最側近だった鴨下一郎元環境相が引退を表明するなか、「いま総裁選をやる熱はない」(中堅議員)と擁立論は高まっていない。
国会議員の支持拡大も一向に見えない。前回の議員票はわずか26票。石破派が“次”を見据えて、他派閥に支援を働きかけても「無理」(中堅)という冷たい反応ばかり。今回は先に立候補を表明した岸田文雄前政調会長が、菅首相との対立軸をアピールする。仮に石破氏が出馬しても、どこまで支持が広がるかは見通せない。石破氏は周囲に「推薦人が集まっても、今の自民党では私の意見に納得しないだろう」と悩みを打ち明ける。
とはいえ、世論調査では次の首相候補として依然高い人気を誇る。自民党関係者は石破氏の態度について「『菅首相じゃ戦えない』という若手の待望論を待っているのではないか」と分析する。
一方、石破氏の出馬に否定的な石破派議員は「反主流派は常に党内結束の道具になり、悲哀があった」とし、総裁選後をこう描く。「今回立たなければ、非主流派が交代するかもしれない」
(井崎圭)
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