野球人生で初のキャプテンに
前川が4番を務めた1年夏の甲子園は、練習補助員として試合前後に道具の出し入れなどでチームのサポート役に回っていたが、その秋からは背番号5を背負った。前川に比べれば決して体は大きくはないが、パンチ力のある打撃が山下の持ち味だ。中学時代は奈良西シニアで1年から4番を務め、打撃には自信があった。高校1年秋は打順は5番、6番を任されていたが、新チーム発足後の2年秋から4番に座った。同時にキャプテンに指名された。 小学校1年から野球をやってきて、キャプテンを務めるのは初めてだった。 「表に立って話すのは得意ではないですし、最初は何をすればいいのか分からなくて。(2年前の主将の)坂下(翔馬)さんや(昨年の主将の)白石(陸)さん(いずれも現近大)は野球がうまいので、背中で引っ張るタイプ。初めはそんな先輩の真似をしすぎて、すごくぎこちなかったですね」 チームのために、と奔走はしてきたが、どうしてもやることが裏目に出てしまう。 昨秋の県大会の初戦直前に練習中に自打球が左足首に直撃した。打撲と診断され「ケガをした自分が練習の中にいたらチームの士気が下がる」と、敢えて練習を休み、グラウンドにも顔を出さなかった。すると、小坂将商監督の逆鱗に触れたのだ。 「何も練習に出なくても、グラウンドの後ろで見ているだけでいいんですよ。なのに練習にすら来ないって。あの時はものすごく怒りましたね。“キャプテンなんかやめてまえ! ”って」 小坂監督は当時をこう振り返るが、もちろん本心ではない。 「しっかりしていますよね。どんな状況でも冷静ですし、慌てない。周りをしっかり見られるんです」 小坂監督も智弁学園での現役時代は4番でキャプテンだった。だが、「自分とは比にならないくらい山下の方が人間性は上」と話す。 とはいえ、当の山下は戸惑いだらけの“船出”だった。だが、井元康勝部長に言われた、ある一言をきっかけに我に返った。 「“やるかやらないか迷った時、やっていいなと思ったことはどんどんやっていけ”と言われたんです。それから自分で少しでもいいと思ったことはどんどんやるようにしました。失敗は多かったですが、重ねていくうちにそれが慣れみたいになって、できないことが分かるとやれることがはっきりしてきて。キャプテンをやっていると、やれないことの方が多いことが分かりました。例えば、ポジションで言うと外野のことは自分には分からないので、(副主将の前川)右京に任せきりでした」 前川は練習に真摯に取り組む真面目さだけでなく、1年夏から注目されてきても全く驕りを感じさせない。そんな頼れるチームメイトである副主将にも可能な範囲のことを委ねるようにした。
からの記事と詳細 ( 「いいキャプテンがいる時は結果が出る」ドラフト候補・前川右京ではなく、主将・山下陽輔が智弁学園の「4番」に座り続けた理由(Number Web) - スポーツナビ )
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