「イスラエルは戦時体制。どこかで犠牲は出るんです」ワクチン接種先進国イスラエルで重症者急増【報道1930】
■「重症者のほとんどは、未接種者と“期限切れ”の人」
今月、60歳以上の重症者数(2月6日1255人)過去最多を記録したイスラエルでは、ワクチン接種と重症化の関係を数値化している。それによるとワクチン未接種者の重症者数は、接種済みの人の約11.6倍。さらにこんなデータもある。ワクチン接種後6か月以上が経過した人は、接種済みの人の約3.6倍重症化している。この6か月経過者のデータは何を意味するのか?
イスラエル在住30年、テルアビブ大学で人文科学東アジア学科の講師を務める山森みかさんに聞いた。(本人はすでに4回目の接種を済ませたという)
テルアビブ大学講師 山森みかさん
「(2回目接種後に発行された)ワクチンパスの期限が6か月だった。ですから6か月たった人は“期限切れ”っていうカテゴリーに入ります。・・・ただ1度も打っていない人よりは比較的(抗体が)あるということで別枠(3つ分類)があるんだと思う」
つまり接種後6か月たったらワクチンの効き目が十分ではないことを国が認めているといえる。今回60歳以上の8割以上がワクチンを接種済みにもかかわらず重症者が急増していることについては、山森さんは政府からこう説明されているという。
テルアビブ大学講師 山森みかさん
「これはワクチンを全く打っていない非常に少ない割合の方が重症化していると説明されています。もしも未接種者がゼロであれば全く状況が違っていたと思うんですが、自由な国ですので、どうしても嫌という人に強制的に打つわけにはいかなかった」
冒頭のデータ通りワクチン接種の効力にイスラエルは敏感で、データを得た後は、2回目のワクチンの“期限切れ”は6か月に設定。去年7月には3回目接種に踏み切った。そしてオミクロン株の情報が入るや否や”期限切れ”を5か月半に設定し、4回目接種を始めるなど、状況に応じ次々と国民にワクチンが打てる態勢を提供している。
テルアビブ大学講師 山森みかさん
「やはり人口の中で何人の人が高い抗体値を持っているかが大事になってきますので、絶対に打たないっていう人はどうしようもないんですが、打とうと思えば打てる人は、なるべく抗体値を上げて欲しいというのが政府の方針だと思います」
日本でいえばこの“期限切れ”の状態の人が日に日に増えていることになる。が、一方でこの”期限切れ”状態を作らないイスラエルの方針への懸念もある。
長崎大学大学院 森内浩幸教授
「それをいつまで続けるのかということ。アルファ株のころはそれでよかったが、変異種が出てきて状況が変わった。当座は、リスクの高い人への3回目の接種は必要だと思います。ですがそのあともずーっと繰り返していくかというと現実的ではない。一番いいのは(あらゆる変異株に有効な)ユニバーサルワクチンの開発ですが、まだまだ時間がかかる・・・」
イスラエルのワクチン接種が充実している大きな要因としてアメリカ・ファイザー社とのつながりがある。ファイザーのCEOの両親はギリシャ系ユダヤ人でホロコーストの生存者でもある。イスラエルには必要量が確保されていることはうらやましい反面、マイナスもあるというのは番組のニュース解説、堤伸輔氏だ。
国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏
「ファイザーと密接であるがゆえに、ファイザーの指導するワクチンの打ち方を従順に守ってきた結果、皮肉なことにオミクロン株の流行と時期がずれてしまった。つまり3回目のワクチンが早すぎた」
つまりイスラエルはワクチンを入手するためにファイザーの広告塔のようになった一方で、打つのが早くなり、オミクロンが流行しだした頃には、3回目接種から6カ月過ぎた人が増え、抗体化が弱まってしまったのではと言うのだ。
■「イスラエルは戦時体制。どこかで犠牲は出るんです」
日本でも緩和されようとしている“水際対策”、イスラエルでは今年に入ってほぼ撤廃されている。72時間以内の陰性証明、2回以上のワクチン接種をしていて、その効力がなくなる接種後180日以内に出国するならば、入国時のPCR検査や入国後の隔離は必要ない。しかもワクチンは日本が認めていない中国製やロシア製も認めているのだ。(ロシア製スプートニクV接種者は要抗体検査)
テルアビブ大学講師 山森みかさん
「イスラエルの場合、国が小さいということと、国内市場が狭いので、どうしても外との行き来をしないと国が生きていけない。あと、ここまで国内で感染が広まってしまったら外から来る人を止めても意味がないことをみんなが共通理解として持っている」
イスラエルでも去年末、次のコロナの波に対して“ロックダウン”か“経済を回す”か、大きな議論があったという。
テルアビブ大学講師 山森みかさん
「共同体としてどっちのリスクを取るか、という議論だった。結局、経済と学校を回さないということは、まず子供たちの居場所がなくなってドロップアウトしていく子供たちが増えていく。あと家庭内暴力が(前回の)ロックダウン中に急増しました。今のオミクロン株が最後ではなくて、補償金をどこの財源からひねり出すのか・・・。で今の政権はもうロックダウンはしないと決め、なるべく経済と教育を回すと明確に舵を切ったと思います」「イスラエルは戦時体制。“最終的にどちらのほうが犠牲が少ないか”を見る。一人も取りこぼさないのはすごく綺麗ごとだとみんな思っていて…。どこかで犠牲は出るんです」
そしてベネット首相の言葉を紹介、犠牲についてのイスラエルの考え方をこう説明した。
テルアビブ大学講師 山森みかさん
「ワクチンを絶対に打たない人は打たないし、マスクをつけない人はいるわけで、ベネット首相は去年末に国民に向かってはっきりとこう言いました。『今は嵐だ。自分たちはレインコートや防具を用意した。それを着たくない人はしょうがない。それはあなたの判断です』」
過去最多の感染者、重症者を出しながらも、ワクチンを打てる態勢などを用意した上で、打たない人や期限切れとなった人については自己判断と割り切るイスラエル。ワクチンの備えと、犠牲に対する考え方、どちらも日本とは隔たりがありそうだ。
(BS―TBS『報道1930』2月16日放送より)
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