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Thursday, April 7, 2022

英ジョンソン首相、「トランス女性は女子競技に出るべきではない」と発言 - BBCニュース

trigerana.blogspot.com

Emily Bridges

画像提供, Andy Jones Cycling Weekly

イギリスのボリス・ジョンソン首相は6日、トランスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が異なる人)の女性は女子スポーツ競技に出場するべきではないと発言した。一方で、この考えが「物議をかもす」だろうと認めている。

トランスジェンダーのスポーツ選手についてはかねて、インクルージョン(包摂性)やスポーツの公平性、安全性などの観点から議論の的になっている。

イギリスではこのところ、自転車競技のエミリー・ブリッジズ選手(21)が国際自転車競技連合(UCI)から女子部門での出場を認められなかったことを受け、この議論に注目が集まっている。

ジョンソン首相はこの日の取材で、先に発表した「転向療法」禁止法案などについて発言。その後、「生物学的男性が女子スポーツに出場するべきではないと思う。これは物議をかもす発言かもしれないが、理に適っているように私は思う」と述べた。

「また、病院や刑務所、着替える場所などでも、女性専用の場所が必要だと思う。この件について、私の考えが及ぶようになったのは、今のところここまでだ」

「この考えが他の人とのあつれきを生むなら、それを解決する必要がある。ジェンダーを変えたい、性別を移行したいという人に私がものすごく同情していないということではない。そういう決定をするにあたっては、最大の愛情と支援が必要だ」

「複雑な問題なので、すぐに決まる簡単な法律1本で解決できるようなことではない。きちんと上手にやるには熟考が必要だ」

イギリス政府は先に、イングランドとウェールズで性的指向を変える「転向療法」を禁止する法案を発表。ただし、ジェンダー・アイデンティティーは禁止対象に含まれておらず、トランスジェンダーを除外していると批判が上がっている。

「複雑かつ急速に展開している問題」

LGBTQ+(性的マイノリティー)の慈善団体ストーンウォールはジョンソン氏の発言について、「トランスジェンダーの人々は、他の人々と同様にスポーツの利益を享受する機会を持つべきだ。トランスジェンダーの人々を一括で除外するのは根本的に不公平だ」と述べた。

「これは複雑かつ急速に展開している問題で、学術的にも発達していない領域だ」

「インクルージョンの方針は競技ごとに考慮されるべきものだし、怒りをあおるような言葉を避けることも重要だ。そうした言葉によって、トランスジェンダーの人は、愛するスポーツをできなくなることが多い」

ストーンウォールはまた、こうした議論ではプロスポーツが「論争の中心になる」ことが多いが、トランスジェンダーの人々は地域社会のスポーツでも「少数派」で、「疎外感を感じている」と指摘した。

その上で、「スポーツには大勢を団結させる独特の力がある。トランスジェンダーの人々が除外されたり虐待されたりすることなく、そうしたスポーツの利益を享受する機会を持つことが重要だ」と述べた。

トランスジェンダーとスポーツ、現在のルールは?

国際オリンピック委員会(IOC)が昨年11月に改訂した最新のガイダンスは、トランスジェンダーの選手が自動的に女性競技で不公平な優位性を持つと推測するべきではないとしている。

また、陸上競技や重量挙げ、体操、水泳といったオリンピック競技については、それぞれがトランスジェンダー選手についてのルールを定めるよう推奨している。

陸上競技の国際団体「ワールドアスレティックス」は、テストステロンの血中濃度を1リットル当たり5ナノモールに、国際自転車競技連合(UCI)は5ナノモール以下と設定している。

「ワールドラグビー」は、プロ競技へのトランスジェンダー女性の参加を禁止ししている。イングランドのラグビー・フットボール連盟は、一定のテストステロン値であることを条件に、トランス女性の出場を認めている。

IOCのガイダンスについては今年1月、38人の医療専門家が批判の書簡を発表。トランス女性選手のテストステロン値抑制をめぐる方針に疑問を投げかけた。

IOCは、トランス女性選手が不公平な優位性を持つかどうかをテストステロン値だけで判断するのは、すでに十分ではないと述べている。

しかし一部の医療専門家は、このガイダンスは人権の観点から作られており、医学的・科学的問題が考慮されていないと指摘した。

イギリスではアマチュアスポーツにも波及

イギリスでは2021年、イングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズ、そしてイギリス全体のスポーツ業界団体が、18カ月にわたって協議や既存研究の検討などを重ね、アマチュアスポーツにおけるトランスジェンダーの人々のインクルージョンについてガイダンスを発表した。

このガイダンスでは、「多くのスポーツにおいて、トランスジェンダーの人々のインクルージョンと公平性・安全性は、ひとつの競技モデル内では共存できない」と説明。

「ジェンダーの影響が大きい協議では、テストステロン値の抑制だけでは、トランス女性と生まれつきの女性の間の公平性は保障できない可能性が高い」と結論付けた。

また、「平均的な女性と平均的なトランス女性、生まれつきの性別が男性のノンバイナリーの人では、体力やスタミナ、体格の違いが残ってしまう」と指摘した。

その上で競技団体に対し、「誰もが疎外されないような、革新的・創造的な方法を考え出す」よう要請。各スポーツがインクルージョンか「競技上の公平性」を選び、それを規約に明記するべきだと訴えた。

ガイダンスでは、もし安全性や公平性が損なわれる可能性がある場合には、男子や女子とは別に、「オープン」や「ユニヴァーサル」といった種目を設けるべきだと示唆している。

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エミリー・ブリッジズ選手をめぐる議論

Emily Bridges

画像提供, ANdy Jones Cycling Weekly

ブリッジズ選手は先週末、イギリスの全国オムニアム(複合競技)選手権に出場する予定だった。

同選手は2020年10月にトランスジェンダーであることを公表し、2021年から性別違和の治療の一環としてホルモン治療を受けている。それ以降、テストステロン(男性ホルモン)を継続的に抑制しているため、イギリス自転車競技連盟の開催する競技には出場を許可されている。

イギリス自転車競技連盟ではトランスジェンダーの選手について、競技の12カ月前からテストステロンの血中濃度を1リットル当たり5ナノモール以下に抑制するよう求めている。

しかし、UCIはブリッジズ選手の国際大会への出場資格について手続きを完了しておらず、同選手は出場できなくなった。

UCIではトランスジェンダーのインクルージョンについて、「健康と安全を守り」、「スポーツの根本的な価値観と意味につながる、公平で意味のある競争を保障する」べきだとしている。

ブリッジズ選手は、すでにホルモン治療を始めていた2021年5月、ラフバラ自転車フェスティバルの男子クライテリウム競技で45人中43位だった。その年の9月のウェールズ全国大会のロードレースでは、最後から2番目に遅くゴールした。

今年3月には自身にとって最後の男子競技となるイギリス大学選手権に出場し、ポイントレースで優勝している。

女性選手からは反対の声も

ジョンソン首相の発言に先立っては、女性の自転車競技選手のグループがUCIに対し、トランスジェンダー選手の出場やテストステロン血中濃度に関するルールを「廃止」し、女性競技の参加条件を「女性の生物学的特徴に基づいた」ものにするよう求める書簡を提出している。このグループには元オリンピック選手や科学者、研究者などが含まれている。

書簡ではブリッジズ選手のケースに触れ、「危機的状況」について「深い遺憾の念」があると説明。UCIとイギリス自転車競技連盟に、イギリスの女性選手が抱える「スポーツの公平についての懸念」を聞いてもらうため、大会をボイコットする用意もあると述べた。

また、テストステロン値の抑制は「男性の有利さを抑えるには不十分」だと主張した。

競技連盟は「板挟み」と

イギリス自転車競技連盟はこの書簡を受け、「これがすべての職員や選手にとって重要な問題なのは理解している。だからこそ、トランスジェンダーのインクルージョン方針について広く意見を求めるフォーラムを提供している」と述べた。

「スポーツがすべての選手の尊厳と敬意を維持しながら公平性を得られるのか、それを理解していくのに重要な議論だ」

また、UCIのブリッジズ選手に関する判断については、「彼女の失望を十分に理解している」と述べた。

その上で、「全てのスポーツ選手の尊厳と敬意を守れるような、より良い答え」を見つけるために、競技連盟や選手、トランスジェンダーやノンバイナリー(性自認が男性だけでも、女性だけでもない人)の選手のコミュニティー、そして政府を含めた、スポーツ界全体の「連立」が必要だと訴えた。

「プロスポーツでは公平性の概念が重要だと理解している」

「トランスジェンダーやノンバイナリーの人々のインクルージョンは、ひとつの競技、1人の選手を超えた問題だ。すべてのプロスポーツにとっての挑戦だ」

ブリッジズ選手の出場の可否が決まる前日、UCIのダヴィド・ラパルティアン会長はBBCスポーツの取材で、テストステロン値を基準とする現行ルールは「十分ではないかもしれない」と述べ、トランスジェンダー選手が競技の公平性に与える影響を「懸念」していると話した。

一方で、UCIは「トランスジェンダー選手が競技に参加する権利を全面的に認めている」とも述べた。

また、女性選手グループからの書簡にも触れ、「トランスジェンダーの方針について真っ向から反対し、UCIに抗議するグループがいることも理解している」と発言。

「私たちは板挟みで、あらゆる関係者から批判を受けている」と述べた。

「侮辱され、悪者扱いされている」

ブリッジズ選手はUCIの決定を受けて声明を発表し、「侮辱され、悪者扱いされていると感じる」と話した。また、出場の可否判断は「ほとんど明確でない」と述べた。

「私はスポーツ選手で、プロとして大会に参加したいだけだ。UCIが規則に沿って判断を考え直してくれることを願う」

「私は、特定の主張を推進している人たちから容赦なく侮辱され、悪者扱いされている」

「その人たちは、普通でないことは何でも攻撃する。個人や、疎外されている人々の幸福にはまったく考慮していない」

同選手はまた、自分のプライバシーが「完全に侵害」されており、ソーシャルメディアで中傷の対象になっていると述べた。

業界誌「サイクリング・ウィークリー」によると、ブリッジズ選手は英ラフバラ大学の研究に参加し、テストステロン値を下げた状態での活動データを提供している。

それによると、同選手の身体能力はさまざまな活動時間で、平均13~16%ほど落ちているという。

ブリッジズ選手は、トランスジェンダーであることを公表したことについてさまざまな反応があり、多くの女性選手から支援のメッセージを受け取っているとも述べている。

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