1966年に静岡県の一家4人が殺害された事件を巡り、死刑が確定した袴田巌さん(87)の第2次再審請求の差し戻し審で、東京高裁(大善文男裁判長)は13日、再審開始を認めるかどうか決定する。事件発生から間もなく57年。確定判決が「犯行着衣」とした衣類5点に残った血痕の「赤み」に関し、弁護側と検察側の主張が対立する中、どのような司法判断が出るのか注目される。

2014年に静岡地裁が再審開始決定を出し、袴田さんは約48年ぶりに釈放。18年の東京高裁決定は開始を認めず、最高裁は20年に差し戻した。

差し戻し審では、半袖シャツやステテコなど衣類5点に残っていた血痕の変色状況が争点になった。衣類は事件から約1年2カ月後、袴田さんの勤務先だったみそ工場のみそタンク内から従業員が偶然発見。血痕に赤みがあり、最高裁はみそ漬けされた血痕がどう変色するのか検証を求めた。

弁護側は差し戻し審で旭川医科大の法医学者の鑑定書を提出。血液がみそ漬けされると塩分などの影響で赤血球の膜が破れ、流れ出た赤色のヘモグロビンはみそとの化学反応で次第に黒くなると結論付けた。弁護側は「血痕は数カ月で黒色化し、1年以上では赤みは残らない」とし、衣類は「捏造(ねつぞう)証拠」と主張した。

検察側は化学反応が起きること自体は否定しなかったが、みそ漬けの環境下では酸素濃度の薄さなどが原因で速度は遅くなると反論。実験で「1年2カ月が過ぎても赤みを観察できた」とした。

弁護側は、検察側実験は温度が一定で、みその量も衣類が見つかったタンクより少ないなどとして「実際の環境と懸け離れている」と問題視する。検察側は「タンク内の再現は不可能で、弁護側の鑑定結果が正しいとは限らない」と反論した。

再審開始を認めた静岡地裁決定は、衣類の血痕は袴田さんや被害者のものではない可能性が高いとした弁護側のDNA型鑑定を信用できると判断した。だが東京高裁と最高裁は鑑定手法を信用できないとし、DNA型の検討は終わっている。(共同)