神奈川県大井町の東名高速道路で2017年、あおり運転で一家4人のワゴン車を停止させ、後続車の追突で死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩(かずほ)被告(32)の差し戻し控訴審判決で、東京高裁は26日、懲役18年とした一審横浜地裁判決を支持し、被告の控訴を棄却した。
◆「ワゴン車の走行を妨害」一審を支持
弁護側はワゴン車の走行を妨害するような運転をしていないと主張したが、安東章裁判長は判決理由で、被告の車がワゴン車の走行を妨害しようと急加速や急減速、車線変更を繰り返したと認定した一審判決について「論理則、経験則に照らして不合理と言えない」として支持。妨害運転と死傷との因果関係を認めた一審の判断も「誤りがあるとは言えない」とした。
スーツ姿で出廷した石橋被告は証言台前の椅子に座って判決を聞き、時折首を回したり天井をあおぐようなしぐさを見せたりした。退廷前、裁判長や裁判官の席に向かって「俺が出るまで待っとけよ」と発言した。
◆「公判前整理手続き違反」でいったん差し戻し
裁判員裁判で審理された18年の横浜地裁判決は危険運転致死傷罪の成立を認めて懲役18年としたが、19年の東京高裁判決は公判前整理手続きに法令違反があったとして一審判決を破棄。差し戻し後の裁判員裁判で22年6月、改めて懲役18年の判決が言い渡された。
判決によると、17年6月、パーキングエリアで静岡市の萩山嘉久さん=当時(45)=に駐車位置を非難され、逆上して追走。あおり運転で停止させ、降車した萩山さんと妻の友香(ゆか)さん=同(39)=を後続のトラックの追突で死亡させ、車内の娘2人に軽傷を負わせた。
◇
◆「あおり厳罰化」後も下げ止まり傾向
神奈川県大井町の東名高速道路で一家4人が死傷した事故をきっかけに、あおり運転の厳罰化を盛り込んだ改正道交法が2020年6月に施行され、高速道路などで他の車の通行を妨げる目的での急ブレーキや急な車線変更などに5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになったが、あおり運転は今もなくなっていない。
チューリッヒ保険(東京)が18年から毎年実施する調査によると、ドライバー約2200人のうち、あおり運転を受けた経験があると答えたのは、18年の70%から19年は60%に減少。ただ20〜23年は50%台で横ばい傾向になっている。23年調査で、あおり運転が改正道交法で減ったと思うか尋ねたところ、「思わない」「どちらかというと思わない」が合わせて48%だった。
◆「ドラレコの普及も効果はある」
九州大の志堂寺和則教授(交通心理学)は「割り込まれるなどしてかっとなり、怒りを抑えられずあおり運転をする人は今も一定程度いる」と分析。機器で測定するスピード違反よりもあおり運転は取り締まりが難しい面もあるとし「あおり運転の危険性を地道に啓発するのに加え、ドライブレコーダーの普及も効果があるだろう」と話す。(中山岳)
関連キーワード
おすすめ情報
からの記事と詳細 ( 裁判長に「俺が出るまで待っとけよ」 東名あおり運転一家4人死傷の被告に高裁も懲役18年判決:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞 )
https://ift.tt/Hic4I7k
出る
No comments:
Post a Comment