外国人の収容ルールを見直す入管難民法改正案が、23日召集の通常国会に提出される見通しとなった。これを受け、2021年3月に名古屋出入国在留管理局で収容中に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=の遺族らは12日、東京都内で記者会見し「収容について上限設定や司法審査もない法案ならば、外国人の人権がないがしろにされる」と訴えた。
入管難民法改正案は21年に国会で審議入りしたが、ウィシュマさんの死亡などを受けて衆院法務委員会で採決が見送られ、同年10月の衆院解散で廃案となった。今回の改正案は旧案を一部修正するものの、難民申請中の送還を可能にし、収容期間の上限は現行通り設定せず、収容に関する司法審査がないなど、骨格は維持されるとみられる。
会見でウィシュマさんの妹・ポールニマさん(28)は収容期間の上限設定がなければ「入管が都合のいいよう収容してしまうのではないか」と懸念を示した。その上で「姉は無期限で収容されて健康が悪化し、命を落とした。無期限収容を変えないと、姉のように命を落とす人が出るのが当たり前になる」と訴えた。
旧案で、原則として難民申請を2回までに制限し、暴れるなどして送還を拒否した場合に懲役1年以下の罰則を設けるとした点は維持される見込み。もう1人の妹・ワヨミさん(30)は「送還拒否で懲役刑というのは、外国人への人権の侵害で、正しいルールではない」と厳しく指摘した。
遺族を支援する弁護団からも批判が相次いだ。高橋済弁護士は「(旧案を巡る)与野党での修正協議やウィシュマさんの事件の反省を全く踏まえてない。収容期間の上限設定がないというのは、国際水準からほど遠い状況だ」と非難。駒井知会弁護士も「現状でも難民条約が守られていないのに、さらに状況が悪化する」と怒りをあらわにした。
指宿昭一弁護士は「2年前の法案の骨格を維持する内容なら、法案を出すべきではない。ウィシュマさんの死の真相は解明されてなく、入管施設の改善が進んだとも思えない」と話した。 (望月衣塑子)
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